ひとつ前の記事「輪行とは?輪行できると何がいいの?」で、輪行の活用方法を書いた。この記事では具体的な輪行の方法を書いてみる。
おさらいすると、輪行とは自転車を公共交通機関に載せて移動すること。
飛行機や新幹線、フェリーなど輪行の交通手段はいくつもあるけれど、この記事では最もベーシックな普通の電車のケースを説明する。
必要なもの
輪行袋
自転車を電車に積んで移動する「輪行」には、自転車を輪行袋という専用袋に収納する必要がある。
サイクルトレインと呼ばれるごく一部の電車では自転車をそのまま載せることができるけど、それは例外中の例外だ。
基本的に輪行袋が必要だと思っておこう。
ブロンプトン社を始めとして、各自転車ブランドから販売されている。ブロンプトン専用と謳われていない製品でも問題ない。収まりさえすればいい。
僕のように自作する人もいる。
ただしビニール袋はNGだ。
流れ
まずはザッと流れを把握しよう。
- 家から最寄り駅まで自転車を漕いで行く
- 駅の邪魔にならないところでブロンプトンを輪行袋に収納する
- 輪行袋を持って改札を通り、ホームで電車を待つ
- 車内に乗り込み目的地まで移動する
- 改札を出て、ブロンプトンを組み立てて出発
輪行をするからといって特別な出入口があるわけじゃないし、自転車だけ別の車両に積むこともなければ、追加料金がかかることもない。
普段、電車に乗るときと同じようにすればいい。
輪行のやり方はこの一文で済むのだけど、以下ではもう少し丁寧に、初めて輪行をする人の不安を取り除けるように説明してみよう。
駅のどこで準備をするか
まず改札に入る前に自転車を折りたたんで輪行袋に収納する必要がある。
通行人や鉄道会社の人の邪魔にならない場所で作業しよう。
「ここなら絶対に大丈夫」と言えたらいいんだけど、駅の構造や人の通行にはバラつきがあるから、各自が現場で判断するしかない。
ただ常識で判断すればトラブルは起きないはずだ。
たとえば狭い通路だと邪魔になるよね。自販機や券売機の前も邪魔になる。
あと細かい部分だけど、「ちいさなパーツを落とすと厄介」な排水溝の近くは避けよう。折りたたみ部の固定に必要なパーツを落として回収できなければ走行不能になって、その日のサイクリングはおじゃんになる。
輪行袋への収納方法
輪行袋には大きく分けて2種類ある。
- 下から履かせるトートバッグ型(上部にのみ出し入れ口)
- 上から被せるTシャツ型(上下に出し入れ口)
トートバッグ型は、普通のバッグをイメージしてもらえばいい。地面に広げて、折りたたんだ自転車を置いて、口を絞って蓋をする。
Tシャツ型は、子どもにTシャツを着せるイメージだ。折りたたんだ自転車の上から輪行袋を被せて、上下の口を絞って蓋をする。
トートバッグ型だとかTシャツ型というのは、イメージしやすいように僕が付けた分類だから、他所で言っても通じないからね。
改札を通って、ホームで待機する
ブロンプトンを折りたたんで輪行袋に収納したら、改札を通ってホームまで歩こう。
輪行袋はトートバッグのように肩掛けできるようになっている製品が多い。なかにはリュックタイプや、スーツケースのようにコロコロが付いたタイプもある。
輪行袋が重くてしんどいかもしれないけど、設備や乗客にぶつけないような気遣いと丁寧さが必要だ。
特に改札は狭くて通りにくいから慎重に。幅が広く取られた改札があるならそこを通ろう。階段が辛ければエレベーターを使うといい。
ホームに着いたら電車を待つだけ。
ね、輪行だからといって特別なことは必要ない。
輪行袋と気遣いがあればいいんだ。
先頭、もしくは最後尾の車両に乗る
ちなみに輪行では先頭、もしくは最後尾の車両の乗車を推奨されることが多い。
自転車を収納した輪行袋は大きく、ほかの乗客の邪魔になりやすい。先頭、最後尾の車両であれば乗客が少ない上に、運転手近くの空いたスペースに自転車を置きやすいんだ。
だからホームでは先頭か最後尾の車両の位置で待つのが無難だ。真ん中の車両に乗ってから先頭まで移動するのは大変だから、最初から先頭か最後尾に乗り込むほうがいい。
僕の場合、混雑する時間は避けた上で、基本的には先頭か最後尾の車両に乗る。乗客が少ないと分かっているなら、トイレ付きの車両を選んで乗ることもある。
あと折りたたんで輪行袋に収納したブロンプトンは不安定だから、目を離した隙に倒れないように注意しよう。
たとえばブオーっと突風が吹いてガシャンと倒れることもある。万が一、線路に落ちてしまうと一大事だ。
脚に挟んでおくと安心だ。
車内でどう過ごすか
車内に入ったら、まずは観察する。
人の流れ、混み具合、自転車を置けそうな場所…。
車内が空席だらけなら、席に座って足元に自転車を置いておくことが多い。脚に挟んだり軽くつまんでおいたりして、倒れないように気を払う。
ある程度混雑していて座席周りに自転車を置くと邪魔になりそうなら、運転手、車掌さん周りや出入口付近の空いたスペースに自転車を置いて隣で立って過ごす。
この際、車掌さんや乗客の出入りを妨げないように扉の前には置かないようにしよう。これも気遣いだ。
慣れた人だと車内の手すりと輪行袋をストラップで繋いで転倒防止をして、自分だけ少し離れた席に座ることがある。
僕はこの方法をやったことがない。試しにストラップで固定してみたことはあるけど、その場を離れることができなかった。小心者だから「もし倒れたら…」と思うと不安でたまらないのだ。
だから常にブロンプトンのそばで過ごすようにしている。それでいい。
あとは思い思いに過ごそう。
景色を眺めてもいいし、文庫本を読んでもいい。僕は「お腹が痛くなりませんように」とドキドキしていることが多い。
余談だけど、大学の卒業式は行きのバスで腹痛に襲われてたどり着けなかった。
目的の駅に着いたら
目的の駅に着いた後も、特別なことは必要ない。
周囲に気を配りつつ、改札を通る。
邪魔にならないところに輪行袋をおろして、ブロンプトンを組み立てる。早く走り出したい気持ちをほどよく抑えつつ、落とし物がないかチェックする。
あとは走り出すだけだ!
疑問になりそうなこと
貴重品をどうやって運ぶか
ここまでは自転車の持ち運びに焦点を当てて書いてきたけど、実際の輪行では貴重品も携帯している。
スマホや財布、改札を通るICカードなど。
自転車を担いでいると片手、もしくは両手が自由に使えない。
たとえば貴重品を手提げのトートバッグに入れてしまうと、右手には自転車、左手には貴重品と両手が塞がってしまう。
僕らは大人だし、荷物の持ち方なんて好きにすればいいんだけど、片手は自由に使えるようにしておくと安心できる。
おすすめはペダルを漕いでいるときはブロンプトンに取り付けできて、輪行のときはショルダーバッグになる2WAY仕様のバッグだ。
輪行のためだけにバッグを用意する必要がなくなるし、ブロンプトンにまたがっているときにスマホやカメラを取り出しやすくて重宝する。
ブロンプトン専用品でも汎用品でもいい。おおきなバッグもあれば、貴重品だけ収まるような小ぶりなバッグもある。
たとえば僕が手作りした2WAY仕様のバッグがある。ブロンプトンに乗っているときは面ファスナーでハンドルに固定できて、輪行のときはショルダーバッグになる。
ショルダーバッグは手が自由だし、バッグを下ろさずに中身をゴソゴソと漁れるから、改札手前でサッとICカードを取り出しスムーズに通れる。
ズボンのポケットを使うこともあるし、その日の荷物や目的に合わせて臨機応変に。
街を出歩ける服装なら何でも
輪行だからといって、特別な服はいらない。
いつも自転車に乗っている服装でいい。
ジーパンでも、Tシャツでも、スニーカーでも、スポーツウェアでも。
ロードバイク乗りが着るピタピタのサイクルジャージで輪行している人を見かけたこともある。その際、車内で浮いた存在になることを避けるために、軽量なハーフパンツを持参して輪行の時だけそれを穿く人もいる。
街を出歩ける服装なら何でもいい。
帰りの輪行で汗臭さが気になるなら、消臭スプレーを持っていくといい。
注意点
鉄道会社のルール

実は輪行袋に収納していればいいという話ではない。各鉄道会社には自転車を持ち込むときのルールがある。
折りたたみ自転車ブロンプトンなら収納サイズで引っかかることはないけど、サイズや重さの制限があることは頭に入れておこう。
上の画像はJR四国のものだけど、どこの鉄道会社も似たりよったりのルール。つまるところ、輪行袋にちいさく収めて周りに配慮してくださいね、ということだ。
僕自身、すべての鉄道会社の規則を確認したわけではない。輪行する前に利用する鉄道会社の規則をみておこう。
「鉄道会社名 自転車」や「鉄道会社名 手回り品」などと検索するといい。
ブロンプトンのコロコロが使えない
ブロンプトンの特徴といえば、折りたたむとスーツケースのようにコロコロと押せることだ。重さがデメリットとして挙げられることが多い自転車だけど、コロコロと移動できるなら重さなんて関係なくなる。
そんなコロコロを活用した輪行は「転がし輪行」と呼ばれたりする。駅構内の長い距離を輪行袋を担がずにコロコロと移動するのだ。
ただ残念なんだけど転がし輪行はできないと思っておこう。コロコロを含めて輪行袋に収納しないといけないからだ。
僕が調べた限りでは、グレーゾーンのなかで常識的に判断してくれよという雰囲気を感じたのだけど、いずれにせよ転がし輪行は避けている。
代案としては、コロコロ付きの輪行袋やキャリーカートを活用する手がある。
僕は田舎のちいさな駅の利用が多いからコロコロがなくてもいいんだけど、体力や環境に合わせて検討してみよう。
満員電車は避けるのが無難
通勤ラッシュのように満員電車が予想される時間は避けるのが無難だ。
僕自身はよほどの緊急事態を除いて満員電車で輪行することはないと思う。単純に居心地が悪い思いをしてまで輪行をする気がないから。
「混んだ電車に自転車を持ち込むと周囲に迷惑がかかる」というマナーの話をする気はない。
僕らは大人だから、自分で考えて行動に責任を持つ。周囲に配慮を忘れない。それだけだ。
対策としては、あらかじめ混み具合を調べておいたり、満員の区間や時間帯だけペダルを漕いで、空いた時間から輪行をしたりできる。
輪行のマナーは難しく考えなくていい
輪行のルールやマナーはSNSで火種になりやすい。だらしない輪行をしている人をネットに晒し上げて「自転車乗りの印象を悪くするな」なんて言ってる人もいる。輪行警察なんていう嫌な言葉まである。
そんな棘のある強い言葉を見かけると、「ルールってなんだ?」「マナーって一体どこまで守ればいいの?」「輪行が怖い」なんて難しく考えてしまうかもしれない。
ハードル上がっちゃうよね。僕もネットで輪行マナーについて言及するの怖いもん。
だけどさ、話はもっと単純だと思うんだ。
道を教えてくれたらありがとうと伝えたり、おばあさんが重い荷物を運んでいたら声をかけたりするのと同じように、ただ気配りや思いやりを持てばいいんだよ、きっと。
ルールを振りかざしてネットで糾弾することでもなくて、わがままで身勝手な振る舞いをしてもいいということでもなくて、頭と心で考えることが大切だと思うんだ。
輪行袋にちいさく収納して、周りに配慮をする。そして自分の行動に責任を持つ。
たったそれだけの話で、難しく考える必要はないはずだよ。