服装なんて、なんでもいい
ブロンプトンに限らず、自転車に乗るときの服装なんてなんでもいい。
真面目な自転車メディアでは動きやすさだとか汗が乾きやすい素材だとか書かれていて、つい難しく考えてしまうかもしれない。服を「ウェア」ってカタカナで書かれたら緊張しちゃうよ。
だけどそういうのは気にしなくていいんだよ。綿のTシャツとジーパンでいいんだよ。不真面目でいいんだよ。
もちろんシャツの速乾性やズボンのストレッチ性を気にしたほうが快適に自転車に乗れる。だけど「動きにくくても好きな服でおしゃれして乗りたい」とか「着替えるのめんどうだから部屋着でいいや」いう気持ちを優先したっていいんだ。
100万円のロードバイクにジーパンで乗ったっていいし、僕はそういうのも好きだ。かっこいいよ。
もちろんブロンプトンにピタピタのサイクリングウェアを着て乗ってもいい。
そんなの言語道断という過激な人もいるだろうけど、余計なお世話ってもんさ。
ブロンプトンらしいファッションは「いつもの服」

ブロンプトンに限らず、自転車に乗るときの服装なんてなんでもいい。
だけどそれでは指針が無さすぎて困ってしまうだろうから、ブロンプトンらしい服装を考えてみよう。
その前に、まずブロンプトンとはどういう自転車なのだろう。
超軽量で走行性能に優れたモデルもあれば、未舗装路向きのGラインなんてのもある。
クラシックで実用的で、キュートな車体でもあるよね。少し背伸びをしてツイードのジャケットなんて似合いそうだ。
けれど根底に流れているのは暮らしに寄り添う「実用車の系譜」だと思う。
ブロンプトンの歴史を見てもそうだし、僕自身が乗っていてそう感じる。
それって、つまりママチャリなんだよ。
ブロンプトンらしい服装があるとするなら、ママチャリに乗るような服。つまり普段着であり、いつもの服だと思うんだ。
普段ママチャリに乗るからといって、動きやすい服装にしようとか汗が乾きやすい素材にしようとか考えないよね。
寝間着、スーツ、デートのためにとびきりのおしゃれした服…なんでもいいんだよ。
そんな「自転車に乗ることを意識していないような服装」がブロンプトンらしい服装だと思う。
だからブロンプトンにどんな服装で乗っていいかわからないなら、試しにいつもの服装で乗ってみたらどうかな。
そのうち目的や用途に合わせて機能的な服が欲しくなるかもしれないし、僕のように自転車専用ウェアを一着も持たないままかもしれない。
大人も綿のTシャツで汗だくになろうよ
大人になって忘れてしまったかもしれないけど、綿のTシャツで汗だくになるのって悪くないよ。
いいじゃん、びしょびしょになったって。肌に張り付いて気持ち悪くたって。シャツが汚れたって。
その分、格別の風呂が待っている。子どものときと違ってキンキンに冷えたビールだってあるよ。大人の特権さ。
綿のTシャツのようなローテクなウェアが自転車メディアで推奨されることはまずない。けれど、unBIKEとしては「それいいね」と言いたい。
ブロンプトンユーザーでファッションディレクターの金子さんは雑誌のインタビューにこう答えていたよ。
コウノ アクティブに走る際の洋服は、なんとなくイメージできるのですが、普段自転車に乗るときの洋服はどうしていますか?
金子 そうですね、こういう意見が多いかもしれませんが、ブロンプトンのときは何も気にしてないですね、裾バンドを使うぐらいですかね。
コウノ 肌に近い部分は化繊系の素材とか?
金子 汗をかくからという理由で化繊は着ないですね、ウールとか洗いにくいモノは避けるけど、綿の着心地の良いものを普段どおり着ているだけです。
コウノ 洋服に精通している人たちが共通しているワードって、自転車に乗るための服ってワザワザそれにしなかったりしますもんね。
金子 はい、同じ意見です。でもそれくらい自然体で乗れるモチベーシヨンじゃないと疲れちゃうし、今日は自転車だからナイロンのパンツじゃなければダメだ、とかは違うかなと思います。
Bicycle Club No.456 暮らしの自転車 p068
イギリス生まれ、ロンドン育ちの自転車。ブロンプトンが街乗りに支持される理由。では、本場イギリスのブロンプトン乗りのスナップ写真が掲載されている。
本場の人が多様な乗り方をしてるんだから、僕らも気楽に乗ればいいんじゃない?
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こんな楽しみ方、粋じゃない?

せっかくブロンプトンに惹かれたんだったら、新しい服を買う前にクローゼットにある服を見直してみるのはどう?
ブロンプトンは一生モノと表現されることがある。
僕は一生モノという表現は好きじゃない。「ウソつけ」と思ってしまうから。けれど長く使うという心意気は大好きだ。
実践するとなると難しいこともあるし、僕自身が服や自転車のようなモノに深い愛着がわくタイプではない。いま乗っているブロンプトンを高値で買い取ってくれる人が現れたらすぐに売ると思う。
それでも、憧れる。
僕と同じようにブロンプトンのそういう「一生モノの精神性」に惹かれた人、きっといるよね。
だからさ、いつも着ているシャツにアイロンをかけてみたり、襟の黄ばみを落としてみたり、小穴を針と糸でふさいでみたりしてブロンプトンに乗ってみるのはどう?
よく晴れた日曜日、少し早起きしてお弁当にサンドイッチを作る。すっかりきれいになったシャツに袖を通し、ブロンプトンにまたがって公園へ。ベンチに腰を下ろして、学生時代から使ってる古びたヘッドホンで音楽を聴きながら今朝作ったサンドイッチをほおばる。
おしゃれな服を着るのとは違うけど、これもまたおしゃれな乗り方じゃない?
見るべきは自転車メディアでもファッション指南サイトでもない
それでも、やっぱりおしゃれな服を着こなしたいと思うよね。僕だってすれ違いざまに振り向かれるようなかっこいい大人になりたい。
けどさ、本を読んだり、映画を観たり、DIYをしたり、山に登ったり、それこそブロンプトンを走らせてみたり、おしゃれになるって服以外のことのほうが大事な気がするんだ。
見た目だけ取り繕ってても、なんだか薄っぺらくない?
むしろさ、服なんて気にしてないほうがかっこよくない?
ブロンプトンにおしゃれな服装で乗りたい人が求めてる答えではないとわかってるんだけど、僕のファッション観はそんな感じなんだよね。
写真家の幡野広志さんは著書で以下のように書いていた。
映画を観ましょう、音楽を聴きましょう。漫画を読みましょう。小説もいいです。ゲームもいいです。それから美味しい料理を食べましょう。写真以外の趣味を持ちましょう。 電車に乗ってあてもなく海に行って波の音を聞くのもいいです。スポーツでもいいです。 美術館に行くのもいいです。カメラを持ってるときにどれくらい写真とカメラ以外の話ができるかを考えましょう。
(中略)
写真に大切なのは写真以外の知識と経験です。
うまくてダメな写真とヘタだけどいい写真 幡野広志 p82.83
だからブロンプトンにおしゃれに乗りたい人が見るべきは自転車メディアではないし、ファッション指南サイトでもないと思うんだ。
「僕はおしゃれです」なんて言うつもりは毛頭ない。服装を選ぶのがめんどくさくて毎日Tシャツにスウェットパンツの怠け者だ。けれどファッションばかり気にしていた頃よりはいくらかマシになったと思う。

さて、おしゃれを語ることほど野暮なことはない。
unBIKEはファッションサイトではないから、あとは本に任せよう。
暮しの手帖の元編集長である松浦弥太郎さんの「場所はいつも旅先だった」というエッセイ本がすごく好きだ。
松浦弥太郎さんといえば「ていねいな暮らし」。
ていねいな暮らしと聞くと、憧れの気持ちとちょっと斜に構えてしまう自分がいたのだけれど、このエッセイ本にはいい意味で裏切られた。
よければブロンプトンのお供に。
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